
◆G1ウェイキーカップ開設71周年記念(1日・ボートレース多摩川・3日目)
輝ける通算2500勝達成から一夜が明けて、徳増秀樹が生涯を賭けて挑む通算3500勝到達へ再び走り始めた。
「2500勝を記念レース中に達成できたことは本当にうれしかったです。いろいろなみなさんの前で勝つことができて、たくさんの方に祝福してもらって、本当に良かったです。記念で勝つことは本当に難しいことだからね」
偉業に到達した瞬間、業界屈指の特濃キャラクターを誇る彼がどれだけ同じ選手たちから尊敬され、愛されているかがよく分かった。
先輩、後輩を問わず、多彩な選手たちが徳増を取り囲み、「おめでとう!」「ヒデキ、すごい!」「さあ、みんなで水神祭だ」とヤンヤヤンヤの歓喜が響きに響いた。
今もなお感慨が残っている表情で愛すべき男が続けた。「もうね、それが一番でしたね。後輩たちも気さくに声を掛けてくれて。自分は結婚をして子どもを授かって変われたのかもしれない。ずっと独り身だったら今とは違ってもっと狭い交際、交流をしていたかもしれませんが、家庭を持ったらいろんな世代の人と交流するようになった気がします」
確かに以前は、どこか近寄りがたき雰囲気を発散させていたように映ったが、今はまるで違う。多くの後輩たちが親しみを持って、徳増の元に寄ってくる。2500勝のメモリアルゴールを決めた後も、後輩たちから「ヒデキ~」と深い親しみを込めて、あえて呼び捨てで祝福の声が飛び交っていた。
「はい、それでいいんです。自分をいじって楽しんで、喜んでくれたらそれでいい。僕が若かった当時は、本当にいろいろな先輩たちに助けてもらっていました。あの頃の自分はとにかく人に迷惑ばかりを掛けていましたからね。後輩は絶対に手本にしてはいけない(苦笑)。そんな自分を先輩たちがずっと面倒を見てくれたからこそ、今があるんです。もう、自分がこの年になると当時の先輩たちもどんどんいなくなっちゃったし、今度は先輩がしてくれたことを自分が下の選手にしいないといけないんです。それが恩返しになると思うから」
選手として完成し、人間としても完熟の時を迎えた。心身ともに落ち着き、安定した希代の個性派は、この先どんなレーサー人生をつむいでいくのだろう。
「2500勝を達成した時にも言いましたが、今後の大きな目標は北原友次さんの3417勝の最多勝記録をひとつでも上回ることです。だから引退するまでに3500勝を目標にしています。もちろんグランプリに出場して、そこで活躍したい思いは今もあります。でも、自分は年間を通して安定できる選手じゃないんでね。松井繁さんみたいにずっと高いレベルで安定できないんですよ。どちからと言えば爆発力がある方なので、そこを魅力だと思ってくれるみなさんもいるかと思う。でもなあ、その爆発力が大きいレースで出るわけじゃないんです。たまたま一般開催で爆発しちゃう時の方が多かったりもするんですよ、これが。だったら長い時間を掛けて、ひとつずつ1着を積み重ねて、いつか届いたらいいのになあと思って、目標にしました。う~ん、今のペースなら達成できない数字ではないと信じて、これからも続けていきたです」
本人が言うように、決して器用なタイプではないのかもしれない。
無骨で実直で、隠してもすぐに喜怒哀楽がこぼれてしまう。でも、そこが彼の人間としての大きな魅力でもある。
「そうなんですよね(苦笑)。僕は自分のことを格好いいとは思っていないので、格好良くありたいと思って、そう振る舞っていた時期もありましたが、これがうまくできない(苦笑)」
でも、だから人間味がある。親しみがわいてくる。人生が濃くなる。
失礼を承知で、特濃マンに伝えた。「徳増さんよりも年上なので、100%褒め言葉として、伝えます。徳増さんって、人としてすごくチャーミングでかわいいんです。いくつになっても素直で純粋で、人間味が濃すぎます」
怒られちゃう覚悟で伝えましたが、「そう思ってくれるなら自分はうれしいです」と濃いルックスを崩して笑ってくれた。
これからも、徳増秀樹は徳増秀樹であり続け、いつの日か、どでかい目標に辿り着く時がやって来ることを願っています。唯一無二の特濃トクさん、2500勝達成おめでとうございます。(淡路 哲雄)