西山貴浩
西山貴浩

◆SG第61回ボートレースクラシック(28日・ボートレース蒲郡・5日目)

 この男は、やっぱり凡人じゃない。常人じゃない。唯一無二のエンターテインメントファイターだ。

 西山貴浩が準優勝戦10Rを逃げ切って、今年最初のSG大会でベスト6メンバーにその名を連ねた。

 前シリーズの尼崎センプルカップで右膝に深いダメージを負った。右膝の半月板を損傷した。

 負傷した直後は、今シリーズ参戦を断念せざるを得ない状況だったが、いつもの快活な笑顔を浮かべて、ここ蒲郡へとやって来た。

 「けがをした直後は本当にやばかったですよ。実は選手になって初めて『引退』を意識したぐらいです。でも、嫁にそのことを伝えたら、静かに聞いていました。そして言われましたよ。『わかった。でも、あと7年は走ってね』って。はははっ。さすがは我が嫁ですわ。まあ、これぐらいじゃないとニシヤマタカヒロの嫁は務まらんですからね(笑)」

 懸命なる治療を施し、何とか戦闘態勢を整えて今大会を戦い続けてきた。時に足をいたわりながら歩く姿を見かけたが、それでも水上へと向かうと、いつもの鋭きハンドルワークでV戦へと駒を進めた。

 「まだ万全とは言えませんが、走る以上は言い訳できない。結果を出すしかない。ワタクシは大丈夫です!」と気丈を貫いた。

 「けがを理由にしたらファンに申し訳ない。こういう仕事をやっていると何かといろいろ叩かれたりします。ほら、野球のWBCだってそうだったでしょ。あれだけ国民から期待されても、一度でも負けてしまったら、もう手のひら返しで批判されてしまう。日本チームは本当に大変な思いをしたはずですよね」

 その時の表情はやや曇りがちだったが、ここから西山ならではの発想と感性を快活に口にした。

 「でもさ、叩かれるってことは、それだけいろいろな人が注目してくれているということなんですよ。中には批判されて、叩かれることに心を痛めてしまう人もきっと何人もいる。本当にきついと思うし、メッチャかわいそうですよ。でも、自分はそうじゃない。だって、ぜ~んぜん強くもなんともない時期から、それこそB2級の頃から自分は自分のやり方を貫いてきましたからね。当時はメッチャ叩かれたし、今だってそうです。でも、そのお陰で喜んでくれるファンはもっと増えてくれたし、オールスター投票も2位ですからね~。本当にありがたいことです。まあ、自分はプライベートでも嫁に叩かれまくられているので、そこでメッチャ鍛えられまくっています。嫁に感謝です(笑)」

 さあ、2度目のビッグタイトル戴冠へ。業界最強のエンターテイナーが夜の水上へといざ向かう。

 「けがをして、この年齢になって改めて思いましたよ。ああ、松井繁さんってすごいなあ、池田浩二さんてすごいなあって。末永(和也)ってすごいなあってね。まあ、自分もとにかく頑張りますわ。だってファンがたくさん応援してくれるからね!」(淡路 哲雄)